Dolce Vita ――― 甘い生活





「おい、香藤。」

「え、なに〜?」

振り返った俺に、岩城さんはデジカメを向けた。

「あれ? なに、こんな格好、撮るの?」

「ああ、プライベートのを、二枚って言われてるだろ?」

「そうだけど。」

笑っちゃった俺に、岩城さんはカメラを抱えてちょっと首を傾げた。

「突っ立ったままでいいかな。」

「いいけどさ、このボウルどうすんの? このまま?」

「いいんじゃないのか。香藤洋二の違った面が見れて。」

「びっくりするかな、みんな。俺が家でケーキ作ってるなんて。」

台の上に座って、俺は岩城さんがカメラを構えるのを待った。

「で、なに作ってるんだ?」

「チョコレートケーキ。」

「は?」

「今日、バレンタインなんだけど、岩城さん?」

「・・・ああ、うん。」

別のボウルにあるチョコペーストをチラッと見て、岩城さんの頬が赤くなった。

二枚、写真を撮って岩城さんはカメラを下ろした。

「ほら、これでどうだ?」

差し出されたデジカメの画像。

「いいねぇ、香藤洋二の新たな魅力?」

「ばか言ってろ。」

岩城さんはそう言って笑いながら、リビングへ向かった。

「・・・あ、そうだ。」

「うん、なに?」

「冷蔵庫にチョコ、入ってるから。」

どっへ〜!

「そういうことは、先に言ってよ!」




終わり




弓さま
2007年11月26日




Uploaded (anew) 12 October 2014





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