お年賀のオマケ・・・ (僕の声)



©有角ちひろさま


「ねえ、ちょっと・・・」
「うん、なに、弓ちゃん?」
裸の胸を這い回る保坂の手のひらを、黒川が捉えた。
「やめろってば、もう」
疲労感を滲ませたかすれ声。
「今ので最後って、俺言ったよね?」
「そうだっけ・・・」
「こら、そこ、とぼけない」
「だって」
保坂の指先が、そっと黒川の額の汗を拭う。
「條一朗・・・マジ、そろそろ、寝かせて」
吐息まじりの懇願に、保坂は苦笑した。
「・・・それ、さ」
「ん?」
「誘ってるのと、同じだから」
「・・・へ?」
きょとんと、黒川は保坂を見返した。
ほの暗い寝室に、にぶい間接照明。
まっすぐな瞳が、保坂の切れ長のまなざしを探る。

ふたりきりで迎える、初めての正月。
翌日の仕事が入ってない夜というのも、実は初めてだった。
まだ何もかもが照れくさくて、もどかしいけれど。
「俺の部屋で朝まで愛し合って、ベッドで年を明かそう」
そう囁いた保坂に、黒川は真っ赤な顔で頷いた。
「・・・俺にロマンチックを求めても、無駄だからな」
そんな憎まれ口を、叩きながら。
それでも黒川は、保坂の求愛に全身で応えていた。
もう逃げない、と覚悟を決めたかのように。

「わかったよ、弓ちゃん」
保坂の低い声が、もう一度、ぎこちない恋人を呼ぶ。
「じゃあ、キスして?」
「・・・!」
「弓ちゃんから、キスして」
からかうように小さく笑って、保坂はさっさと目を閉じた。
「・・・っ」
全身を、わずかに強張らせて。
おずおずと、黒川は上半身をずらした。
しんなりとしたシーツに、火照ったままの肌が擦れる。
「條一朗・・・」
聞こえるか聞こえないか、わからないほどの声で囁いて。
黒川はそっと、恋人にくちづけた。

©藤乃めい
11 January 2007
わたしの妄想SSに、ちひろ様が素敵なイラストをつけてくださいました♪




2012年10月10日 サイト引越に伴い再掲載
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