2007年黒川さんBDイラスト (僕の声)



©有角ちひろさま


痛くても

「・・・んんっ・・・はぅ・・・っ」
低い声をわずかに漏らしながら、黒川が眉を寄せた。
肩から二の腕へのしなやかな筋肉が、ぴりりと強張る。
「弓ちゃん、大丈夫?」
ぱらぱらと零れる亜麻色の髪。
それをゆっくりかきあげて、保坂が囁いた。
つい、と指先で額の汗を拭う。
やさしい愛撫の感触に、黒川はふと顔を上げた。
「じょ・・・いちっ・・・んあぁ」
恋人の名前を呼びながら、緩慢に頭を振る。
「ゆっくりで、いいから・・・」
緊張を解きほぐすような、やわらかい声音。
包み込むような微笑を浮かべて、保坂は黒川を見上げた。
「・・・うん」
吐息だけで、辛うじてそう返事をして。
黒川は保坂の裸の胴体に手をついて、胸を喘がせた。
保坂の上肢を挟み込むように、膝をベッドについた姿勢。
熱をはらんだ肌が、燃えるような朱色に染まっている。
「・・・痛い?」
ざらりと情欲にかすれた声が、黒川の耳朶をなぶる。
条件反射のように、肌が震えた。
「痛いよ、そりゃ」
強がりを言って、小さく笑って。
それからもう一度瞳を閉じて、黒川はそろそろと腰を下ろした。
「ん・・・っ」
わずかに下肢をグラインドさせるように、捻りながら。
慎重に体重を乗せて、後孔で保坂のペニスを銜え込む。
ギシリ、とベッドが軋んだ。
「ふ・・・くぅ・・・」
汗がころころと裸の胸を伝い、保坂の胸に落ちる。
自分を貫く屹立を、自ら脚を開いて求めて。
「見るな・・・も・・・っ」
ぎゅっと目を閉じたまま、真っ赤に染まった顔を横に振った。
くすり、と保坂が微笑した。
「感じるんだね、俺の視線」
「・・・んっ・・・」
「恥ずかしい・・・?」
したたるような甘い声で、保坂が煽る。
その逞しい腕が伸び、黒川の腰を捉えた。
「あ・・・っ」
黒川の身体が、ぞくりと震えた。
「そろそろいいかな」
独り言のように呟いて、保坂がぐいっと黒川の腰を下ろした。
「な・・・っ」
慌てた黒川が、目を見開く。
真っ直ぐに視線を合わせながら、保坂は黒川を貫いた。
「・・・ひあぁ・・・っ」
ずん、と最奥まで一気に突き込まれて。
黒川は全身を強張らせて、小さく仰け反った。
ぐらりと揺れる身体を、保坂が支える。
その腕に、瞳を潤ませた黒川がしがみついた。
「いっ・・・きなり・・・こんなのって」
堪えようとした涙が、つるり、と上気した頬を転がる。
「た・・・っ」
「痛いの?」
ゆるく律動を繰り返しながら、保坂が聞いた。
こくりと、黒川が子供のように頷く。
「やめてほしい・・・?」
荒い息を抑えながら、保坂が聞く。
「・・・んんっ」
喘ぎ声をかみ殺しながら、黒川は首を横に振った。
くすぶる熱を逃がすように、ふるえながら身悶える。
「・・・い・・・からっ」
熱い欲望にかすれた、甘い声で囁く。
「條一朗・・・っ」
親密な夜を過ごす恋人しか聞くことのできない、とびっきりのバリトン。
保坂はぶるり、と胴震いした。
黒川の乱れるさまを、陶然と見上げながら。
「最高だよ、弓ちゃん」
保坂はひっそり微笑して、黒川の身体を抱き寄せた。

©藤乃めい
16 April 2007




2012年10月10日 サイト引越に伴い再掲載
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