自若 --- 師邸にて





「いよいよ、だな。」

「そうですね。」

岩城が、渋い色合いの御召(おめし)に、緑青の羽織を着て座っていた。

午後の日差しに、その顔を冴え冴えとさせて、師を見返した。

「やりにくいだろう、相手が彼では。」

そう言われて、岩城はふ、と口元で笑って見せた。

「いえ・・・それはとうの昔に、二人で話してありましたから。」

「そうか。」




「当日は、同じホテルなんだろう?」

「ええ、そうです。」

廊下を行きながら、岩城はくすり、と笑った。

「部屋は、別に取ってありますが。」

苦笑を浮かべる師に、岩城は玄関先でゆったりと頭を下げた。

「それでは。」

「うむ。どっちが勝ってもおかしくはないと思う。が・・・。」

「はい。」

得心したように、岩城は頷いた。




終わり


むふふv




弓さま
2007年11月23日




Uploaded (anew) 12 October 2014





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