夜想恋歌

夜想恋歌




あなたがふと淋しげに笑う
もろい儚い心を抱えて
それでも俺のために笑ってみせる



せつないのならそう言って
哀しいのならそう伝えて
恐くない 恐くないよ
俺はいつだってあなたの側にいる
あなたの心の痛みを分かち合える
そんな俺でいたいと思う



微笑むことができないときは
笑わないでいいから
言葉にできない寂寥があるのなら
ただ腕を差し伸ばしてくれればいい
抱きしめてあげる
キスしてあげる
あなたのそのせつなさごと
息がつまるほど愛しているから



ねえ 岩城さん
一言もなくてもいいよ
あなたの瞳が心の懊悩を教えてくれる
ただ俺の腕のぬくもりが
せめてあなたのひと時の安らぎになればいい



もどかしい想いのたけを伝えようと
あなたが苦しむのは見たくない
抱いてあげる
キスしてあげる
あなたの憂いをほんの少しでも
俺が癒してあげられればいい



あなたの気遣いはとてもうれしいけれど
認めてしまってもいいんだよ
ふたりでいても寂しいときはあるよね
それを見ないふりをするのはやめようよ



あなたのせつなさをいつだって共有したい
できるものなら 本当にできるものなら
あなたを苦しめる世界のすべてのものを
俺が代わりに受けとめたい
いつだって いつだって
そう思っているから



ねえ 岩城さん
わけもなく悲しいときは泣いてもいいんだ
震える唇を噛んで
俺の肩でひっそりと泪をこぼす
そんなあなたの壊れそうな心を
この胸で抱きしめてあげたい



あなたが愛しくてたまらない
笑うあなたも せつないあなたも
この世で唯一の俺の恋人だから
ほんの少しでも
心の痛みを分かち合いたい
かじかんだその指先を
俺の唇で暖めてあげたい



あなたの揺らめくためらいも
あなたの身体の奥底にある怯えも
少しずつ 少しずつ
俺の愛に溶けていくといい
日が巡って 時が経って
いつか俺たちが年老いたとき
そんなこともあったと
ふたりで手を取って笑い合えるといい



ねえ 岩城さん
心をさらけ出すのは勇気がいるよね
無理に見せてくれなくていいんだ
俺の知っているあなたも
俺のまだ知らないあなたも
みんな みんな
どうしようもないくらい
俺のありったけで愛しているから



心を預けるのは恐いよね
人を信じるのは恐いよね
焦らないでいいよ
俺はいつまでも待っているから



まずはそっとそのきれいな手を
それからそのしなやかな身体を
ゆっくり ゆっくり
少しずつ俺に委ねてくれたらいい



俺はあなたを力いっぱい抱きしめて
毎日 誓うから
愛しているよ
愛しているよ
愛しているよ
いつの日かあなたが俺を信じて
心をすべて預けてくれるまで
いや 心をすべて預けてくれても
俺はきっと言い続ける



ねえ 岩城さん
愛って目に見えないよね
絆って手で触れないよね
約束って封じ込めておけないよね
そんなものを頼りに生きろって言われたら
誰だって不安であたりまえだよ
それはちっとも悪いことじゃないんだよ



それでもあなたには信じてほしい
俺は心の底からあなたが好きで
あなたが何よりも大切で
あなたが可愛くてしかたなくて
そう 生涯最後の恋をしているんだって
この恋が終わってしまったら
俺が俺でなくなってしまう
そんな恋をしているんだって



俺はあなたから奪うばかりかもしれない
あなたがくれる愛に酔って
あなたの想いを享受するのが精一杯で
それでも いつでも
あなたの心を守りたい
あなたを幸せなときもそうでないときも支えて
あなたに穏やかな安心をあげたい
そういう男でありたい



せつないのならそう言って
哀しいのならそう伝えて
俺はいつだってあなたの側にいる
あなたの心の痛みを分かち合える
恐くない 恐くないよ
震える心をひとりで抱え込まないで
俺がいるよ 一生あなたの側を離れない



ねえ 岩城さん
いつか いつかでいいから
俺の言葉を信じてください
俺を愛したあなた自身を信じてください
俺の生涯と引き換えに
あなたの残りの人生すべてを俺にください




ましゅまろんどん
1 January 2006


2012年11月17日、サイト引越にともない再掲載。文章に最低限の改訂を施しています。