溺愛

溺愛 ― infatuation ―





あなたが欲しい
あなたが欲しくてたまらない
手のひらを重ねて 肌を重ねて
あなたの鼓動も吐息もすべて
奪い尽くしてしまいたい



溺れてるって他人(ひと)は笑うけど
自分では どうしようもないんだ
あなたが欲しい
あなたが欲しくてたまらない
朝でも昼でも夜でも いつでもどんなときでも



あなたの声を 一日聴かないだけで
俺はもう 飢えて飢えて飢えて
どうしようもなく 息苦しくなる
あなたに触れたい
あなたにいつも触れていたい
俺はそんな欲望に 心の隅まで埋め尽くされて
ほかには何も 手につかなくなる



声が聴きたい 肌に触れたい
骨が軋むほど もっともっと強く抱きしめて
俺の腕の中に閉じ込めて
誰にも見せたくない 誰も見てほしくない
俺を見て 俺だけを見て
自分勝手な欲望に 俺は翻弄される



溺れるようにすがって 愛を乞う
甘い吐息に あえなく絡めとられて
俺はあなたを貪り尽くす
好きだとか 愛してるとか
うわごとのように あなたに囁くけど
本当は 言葉じゃ足りない
全然足りるわけがない



あなたが欲しい
あなたが欲しくてたまらない
声も 匂いも そのしなやかな力強い抱擁も
俺にはもう したたる麻薬でしかなくて
ひんやりとした黒い瞳に 魅入られて
俺は我を忘れて あなたにすがりつく



醒めない夢みたいに あなたが笑う
俺の背筋に ぞくりと電流が走る
そう どうしようもなく溺れてるって
他人(ひと)には嘲笑されてるだろう
どこかでまた 滑稽な噂になってるかもしれない
俺にはあなたしか 見えないから
俺にはあなたしか いらないから



カッコつけてなんて いられない
物分かりのいいふりなんて 絶対できない
あなたは鮮やかな毒のように ゆっくり俺を狂わせる
そのまなざしが 俺を奈落に誘い込む
淫らな欲望に 突き動かされて
俺は際限なく昂ぶり あなたをかき抱く
キスを奪って 唇を舐りあげて
それだけでもう 気が遠くなる



あなたが欲しい
あなたが欲しくてたまらない
肌が熱い 全身が震える
はてしない飢餓感に 俺は陶然と焼き尽くされる
あなたの身体の甘さを知ってしまったら
もう 昔の俺には戻れない
もう正気では いられない



あの日 あなたの肌を知ったときから
俺はあなたに 完璧に溺れっぱなしだ
去年も おととしも 五年前も
来年も その翌年も きっと死ぬまで
あなたの一番そばにいたい
誰よりも近くで あなたを感じていたい



俺にはもう ひとり寝はできない
満たされない肌が ざわついて俺を苦しめる
あなたに触れたい
あなたにいつも触れていたい
ほんの一瞬 こうやって離れているのが
こんなに辛い 耐えられない



あなたは今 どこで何をしてるんだろう
俺をひとりにして 誰といるんだろう
声が聴きたい 肌に触れたい
もう待てない 待てるわけがない
あなたに包まれて 熱いささやきを聴きたい
あなたの心を抱いて あなたの身体を愛して
目の眩むような 甘い甘い夜が欲しい



あなたを想うだけで こんなに身体が疼く
あなたに飢えて 俺はおかしくなりそうだ
その濡れた瞳が うっとりと微笑する
柔らかな唇が 何度も何度も俺を呼ぶ
吸いつくような甘い肌が 俺をしたたか狂わせる
極上の官能に 俺は引きずり込まれる・・・



あなたが欲しい
あなたが欲しくてたまらない
ここに来て 俺を愛して
今すぐこのベッドで 溺れるほどに愛し合おう
くすぶる情熱のありったけを ぶつけて
骨も軋むほどに 抱き合おう




藤乃めい
20 October 2006



2013年2月12日、サイト引越にともない再掲載。初稿を若干修正しています。