薫風恋歌

薫風恋歌




俺はひとり 暗い淋しいところにいた
傷ついて 傷ついていることに気づかずに
救いを探して でも助けを呼ぶ術も知らず
ただあがいて それからやがて諦めて
黎明のない世界に 封じ込められていた



無明の闇を 光が照らすように
おまえが俺に 腕を差し伸べた
やわらかな声 あたたかい笑顔
かぐわしい一陣の風に 身も心も攫われて
俺はいつの間にか 太陽の下にいた



灼熱の抱擁 それよりもはるかに熱い言葉
奇跡のように まっすぐなまなざし
風薫る きらめくあの六月の日
おまえという奔流に 抗えず 押し流されて
気づいたら 恋をしていた



おまえが欲しい おまえだけが欲しい
おまえしかいらない 生涯おまえしかいらない
飽くことなく抱き合い 貪るように求め合う
俺の中に これほどの激情が棲んでいたなんて
おまえに愛されるまで 知らなかった



おまえがいて 俺がいて
世界は燦然と 黄金色に染まる
まぶしくて かぐわしくて そして愛しくて
俺は陶然と くちづけを捧げる
輝かしく鮮烈な 誰よりも美しいおまえに



愛に溺れ おまえに溺れる
おまえに抱(いだ)かれて 俺は俺になる
おまえの熱を受け止めて 俺は幸せを得る
おまえがいなければ 生きていけないと
おまえの肌に触れるたびに 思い知らされる



トパーズ色の薫風が 高原を駆け抜ける
大地が笑い 草いきれが 俺たちを迎えて包み込む
俺だけのおまえの腕に すっぽりと抱(いだ)かれて
俺は 世界のすべてを得る
俺はそんな時間を 美しいと思う



紺碧の空 天には大きな七色のアーチ
風薫る六月の大地が そよそよと誘惑する
おまえがいて 俺がいて
おまえに溺れて おまえの熱に翻弄されて
ほかに何も要らない まったき世界は完成する



おまえに導かれて 俺は高みに駆けのぼる
おまえの腕に守られて 俺はしあわせを識る
かぐわしい季節 翡翠の風が吹く
颯爽と俺を攫ったおまえの 雄々しい生命力に
俺は溺れて どうしようもないほどに溺れて



俺を見つけだした 天恵のおまえ
手を差し伸べたおまえに選ばれた その瞬間に
俺は人生すべての運を 使い果たしたのかもしれない
しあわせだよ 今がいちばん しあわせだ
おまえがここに いてくれるから



ありったけの想いと この身ひとつだけ
おまえに与えてやれるものは ほかに何もないが
それでもおまえに相応しい 俺でありたい
望むことは ただひとつだけ
おまえの人生が 馥郁と豊かなものでありますように



風薫る六月 山は笑い 俺たちを赦す
おまえの愛が俺を満たし 潤して やがてあふれる
奇跡のようなそのきらめきに 俺は誓う
あの日おまえが 俺に手を差し伸べてくれたように
いつか俺も おまえの力になれるといい



したたる万緑の中 木漏れ日が肌をくすぐる
俺たちはゆったりと抱き合って 深いキスを交わす
まぶしく かぐわしく そして美しいおまえに
俺は心からの 憧憬のくちづけを贈る
おまえは俺のものだ 俺だけのものだ



おまえがこの世に生まれて来て ほんとうによかった
おまえが俺を選んでくれて ほんとうによかった
蕩けるまなざし 肌をまさぐる熱い手の感触
かぐわしいおまえの 情熱に流されて
俺はうっとりと 瞳を閉じた




ましゅまろんどん
3 June 2006



Happy birthday Yoji -
We all adore you and stand in awe of all the love and passion that you've shown us all
2013年1月30日、サイト引越にともない再掲載。初稿を若干修正しています。