Passion

Passion 熱情




大きい と思った
とてつもなく大きく しなやかな存在
どこまでも豊かな 俺の愛しい男
いとも簡単に俺を攫い 真綿のような愛で包(くる)み
無上の幸せを 与えてくれる



俺を導く たくましいその腕に
子供のように 全身を預ける
あたたかい おまえの確かな愛情に
甘やかされて 守られて
いつの間にか 俺の心は凪いでいた



敵わない と思う
どうしておまえは そんなに強い
どうしておまえは こんなにも脆い俺を許す
注ぎ込まれる おまえの熱情に
俺は応えるだけで 精一杯だというのに



失いたくない 絶対に失うわけにはいかない
今ほど切実に そう思ったことはない
俺を抱きとめる この腕をなくしたら
俺だけを見つめる この瞳がないのなら
生きていけない 生きていたくない



悔しいと 思うことはある
男として 人間として 雄々しく成長したおまえ
おまえに支えられ 励まされ ようやく均衡を保つ俺
差し出される腕に すがりながら
俺はひそかに 自問する



弱いのだろうか 小さいのだろうか
心が乱れるのは 悪いことなのだろうか
おまえに抱かれ 貫かれて悦ぶ
おまえの匂いに 安心して眠る
それは いけないことなのだろうか



おまえは俺を暖め 俺を癒す
ありったけの愛情で 俺を抱き寄せ
キスひとつで 俺を幸せにする
世界中で ただひとり
おまえだけが 俺を理解する



おまえの微笑が 俺の行く先を照らす
おまえのまなざしが 俺の漣(さざなみ)を鎮める
そう わかっていたことだ
俺のすべてが おまえに帰結する
太陽がなければ光ることもない 蒼月のように



誰よりも愛しい 俺だけの男
俺はこの手を離さない 何があっても絶対に
女々しいと 笑うなら笑えばいい
おまえが俺の 幸せだから
おまえは俺の 命だから



大きい と思った
揺るがないおまえ 揺るがない自信
どこまでも豊かな 俺の最愛の男
いっそふてぶてしいほどの 余裕を漂わせて
俺の葛藤を さらりと掬い取る



せつなくて 眩しくて 嬉しくて
幸せで 幸せで 幸せで
だから余計に おまえを失うことが恐ろしくて
俺は気づいたら 慟哭していた
おまえの腕の中で どうしようもなく震えていた



かつて 愛を知らなかった頃
ひとりで生きる自分を 強いのだと思っていた
それは間違いだと おまえが教えてくれた
わかちあう歓び 生涯を捧げる覚悟
おまえの潔さが 本当の強さなのだと思う



愛してる 愛してる 愛してる
年月を重ねて 大人になったおまえが眩しい
愛情に 愛情を積み重ねて
俺はおまえに 満たされる
おまえだけが 俺の渇きを癒す



愛おしくて どうしようもなくて
狂おしさに 息がつまりそうになる
誰よりもたくましい 俺の愛しい男
迸る熱情に 骨の髄まで侵されて
俺は陶然と くちづけを受けた




ましゅまろんどん
26 July 2006



看過する向きもあるようですが、岩城さんは激情の人です。 ただそれが、必ずしも言葉にならないだけで。 ・・・なんて考えながら、書きました。
2013年2月7日、サイト引越にともない再掲載。初稿を若干修正しています。