December Love 05
「くぅ・・・ふっ・・・んあぁっ」
黒川が熱い吐息をあげていた。
保坂の指の突き入れに合わせて、ゆるやかに腰が蠢く。
ラブ・ジェリーを含んだ肛内が、グチュリ、グチャリ、と淫靡な音をたてていた。
眉をしかめて首を振りながら、黒川はシーツを掴んた手に力を込めた。
「弓ちゃん・・・」
「・・・んんっ」
ふとした加減で、黒川の身体が疼痛に強張る。
歯を食いしばって、ぎゅっと目を閉じて。
痛みをこらえるその身体を、保坂はゆっくり横抱きにした。
腕の中の黒川は―――なめらかな素肌がほのかに紅潮して、思いがけないほど扇情的だった。
その頬を、ひとしずくの涙が伝った。
「じょ・・・いっ・・・ろぉ・・・」
無意識なのだろう。
時折ため息のように、頼りなげに保坂を呼ぶ。
「・・・好きだよ、弓ちゃん」
―――そのたびに甘いささやきを、返しながら。
保坂は恋人の肌をくまなく愛撫し、髪をかきあげ、額にくちづけた。
「大丈夫・・・?」
細心の注意を払って解した後孔は、かなり柔らかくなってはいたが。
黒川の性器を見れば、ある程度の快感を得ているのは間違いなかったが。
・・・濡れた睫を閉じたままの黒川が、なぜか痛々しい。
嫌がっていない、というだけで。
どうしても、前戯に悦び、その先を望むようには見えなかった。
「まだ、早いのかな」
ぽつりと、保坂は自分に向かって呟いた。
「ねえ、弓ちゃん・・・?」
求められているのではなく、許されている感覚。
それはもちろん、幸せなことなのだけど。
黒川が保坂の快楽のために身体を差し出しているだけだとは、思いたくなかった。
そのとき。
まるで、保坂の逡巡を読んだように。
「條一郎・・・」
掠れた声で、黒川が呼んだ。
「なに?」
「・・・あんまり、気を遣うなよ」
黒川はうっすらと瞳を開けて、保坂をじっと見つめた。
睫からこぼれ落ちた涙に気づいて、照れたように笑う。
それからのろのろ手を伸ばして、保坂の性器にそっと触れた。
「こんなに、なってるのに」
はちきれそうな熱いペニスの先を、人差し指で突つく。
「弓ちゃん」
「・・・挿れて、いいって。いつまでもこのまんまじゃ、辛いだろ?」
つややかなバリトンは、かなり掠れてはいたが。
「俺の気が、変わらないうちにさ」
とうに覚悟を決めたような、穏やかな響きだった。
「・・・なんだか、なあ」
保坂は黒川の手を捉えて、苦笑した。
「ん?」
吐息だけで先を促した黒川を、保坂は笑って見下ろした。
「いいよ、じゃなくって。挿れてほしい、って言わせたかったなあ」
保坂はそう言って、大げさに眉をしかめた。
「ばーか」
苦しげな息をこらえながら、黒川が破顔した。
「さっきは理性がぶっ飛んで暴走するって、脅かしたくせに」
―――そうやって、身体をゆすった拍子に。
銜え込んだままの保坂の指が、肛内を引っ掻いたのだろう。
「つ・・・っ」
途端に眉を寄せて、黒川が身をよじった。
あやすように、保坂はその汗ばんだ身体を抱き寄せた。
「・・・ま、確かに。BLCDみたいには、いかないか」
天を仰いで、そう呟くと。
保坂はもう一度苦笑して、震える黒川を弄った。
☆ ☆ ☆
「弓ちゃん・・・」
耳たぶを甘噛みしながら、保坂は囁いた。
熱い吐息に反応して、黒川の肌が粟立つ。
「・・・一緒に、いい気持ちになろうね」
黒川は小さく頷いて目を閉じた。
ゆるゆると両腕を上げて、保坂の背中にしがみつく。
「・・・條一郎」
「うん」
ふるえる黒川の両腿を、担ぐように抱えあげると。
保坂は怒張したペニスの先端を、暴かれた黒川の後孔に押し当てた。
さんざん解されてほころび、濡れそぼったそこが、ヒクリと収縮した。
「英弓・・・!」
―――そのまま、ぐっと体重をかけて。
保坂は黒川を、渾身の勢いで貫いた。
「んああぁぁ・・・っ!」
黒川が、身体を仰け反らせて苦悶の悲鳴を上げた。
引き裂かれるような痛みに、四肢が硬直する。
「い、痛・・・っ」
涙を振りこぼして、黒川が保坂の背中にぎゅっと爪を立てた。
「弓ちゃん、力、抜いて!」
「じょ・・・いちろ・・・」
黒川は、肩を激しく上下させていた。
酸素を求めて、懸命に浅い呼吸を繰り返す。
「きつ・・・」
ひどく締めつけられる、生々しい感覚。
ペニスを半分ほど埋め込んだ状態で、保坂は吐息をついた。
黒川の狭い肛内に阻まれて、それ以上先に進めない。
脂汗を浮かべて、保坂は身体を震わせた。
「はっ・・・んくっ・・・」
苦しげな黒川の身体を、保坂はゆっくりと擦った。
「息を吸って、弓ちゃん」
「ん・・・っ」
いやいやをするように、黒川が小さく首を振った。
「うんと、吸って。大丈夫だから・・・そう。それから、ゆっくり、吐いて・・・?」
いたわるように、保坂は黒川の震える肩を撫でた。
「怖くないから。そう、もう一回ね・・・」
言われるままに、黒川は荒い吐息をついた。
「ん・・・ふっ・・・」
緊張で強張っていた身体が、わずかずつ弛緩する。
「よく、できました」
保坂は小さく笑って、黒川のわななく肌に軽いキスを落とした。
―――肩に、首筋に、鎖骨の下に。
黒川の火照る肌が、柔らかいキスの感触にざわりと反応した。
「ホントに・・・」
少し呼吸の落ち着いた黒川が、保坂の腕の中で身じろぎする。
「なに?」
「・・・保坂くん、手際よすぎ」
涙に潤み、腫れぼったい瞳。
拗ねた視線でじっと見つめられ、保坂は苦笑した。
「それ、すっごいかわいい焼きもちだけど。こっちも、必死なんだってば」
低くそう言って黒川の手を取ると、ゆっくりと下半身に導いた。
無理やり押し広げられた後孔。
そこに半ばまで挿入されたままのペニス。
「けっこう辛いんだよ、これ」
―――二人が繋がっていることを、確かめるように。
「ほら、触って・・・?」
保坂は黒川の指で、熱を持った結合部分をなぞらせた。
「ひぁっ・・・!」
そこがじんじんと、疼くのだろう。
真っ赤になった顔をそむけて、黒川が大きく息を吐いた。
「じょ・・・っ」
「わかるでしょ。・・・まだ半分だよ、弓ちゃん」
耳元でささやかれて、黒川はゾクリと肌をそそけ立たせた。
「もっと、奥まで・・・俺を入れてくれる?」
甘い声に、ほだされて。
唇を震わせながら、黒川は黙って頷いた。
黒川の膝を裏から抱きこんで、保坂がじわり、と腰を進めた。
「あう・・・っ」
ゆっくりと、保坂が性器を突き入れる。
拓かれる慣れない身体の呼吸に合わせて、慎重に腰を捻じり込んだ。
「んっんっ・・・」
狭い肛内を押し広げながら、灼熱が容赦なく侵入してくる。
圧迫感に、黒川の柔襞がきゅうっと収縮した。
ねっとりと蠢き、保坂に絡みつく。
「弓ちゃ・・・っ」
「ふ・・・っ・・・んあっ」
暴かれる感覚に、黒川が苦しげに上半身を泳がせた。
「くっ」
耐えかねたように、保坂がぐいっと腰を突き入れた。
ズッと、ペニスが深く深く差し込まれる。
柔らかな粘膜を擦りあげて、保坂はようやく、黒川の最奥に納まった。
「ふぅ・・・っ」
保坂は荒い息をつきながら、腕の中の恋人を抱きしめた。
「弓ちゃん・・・英弓・・・」
初めて経験する痛みに、震える黒川の身体。
汗でぺったりと額に張りついた長い髪をかきあげ、保坂はそこにキスを落とした。
慈しむように、何度も。
―――やわらかなその仕草に、安心したのか。
黒川はほうっと息を吐いて、保坂にしがみついていた腕を緩めた。
「・・・好きだよ、弓ちゃん。俺が中にいるの、わかる?」
眉をしかめて、黒川が小さく頷いた。
「・・・わからないわけ、ないだろ」
苦しげに嗄れた声。
身体はまだ、異物を受け入れた衝撃に痙攣したまま。
それでも黒川は、笑ってみせた。
「すっげー痛いよ、バカ條一朗。息するだけで、ズキズキする・・・」
胸を喘がせる黒川に、保坂はそっとくちづけた。
「ん・・・っ」
すぐに黒川の両腕が、保坂の首に廻った。
甘いくちづけ。
ピッタリと心臓の鼓動を重ねたまま、お互いの唇を貪る。
「弓ちゃん・・・」
深いキスで、恋人を縫いとめたまま。
保坂は手のひらを、黒川の全身に滑らせた。
痛みに粟立っている肌をいたわるように、やさしく。
萎えてしまった性器を、やわやわと扱いた。
それにゾワリと煽られて、黒川が腰を揺らめかせた。
☆ ☆ ☆
ドクン、ドクンと。
保坂のペニスが、黒川の身体の奥で熱く脈打っていた。
圧倒的な存在感。
しっかりと合わさった裸の胸からも、確かな心音が響く。
―――まるで全身で、保坂の生命そのものを受け止めているかのように。
黒川はその脈動を、愛おしい、と思った。
熱い何かが、胸の底からこみ上げてくる。
異物に侵されているのでは、なくて。
保坂のすべてを許し、包み込んでいるのだと。
・・・そう、思えた。
抱かれているのではなく、抱いているような気すらして。
「そうか・・・」
ひとつになることの、意味。
なぜ保坂がセックスを欲したか、わかるような気がした。
―――こんなふうに繋がることを許せる相手など、他にはいない。
「條一郎・・・」
暴かれて、晒されて、女のように貫かれて。
それで屈辱を感じるどころか、保坂の激情をストレートに伝える脈動を体内に抱えて、心が満ちていく。
愛されているのだと、わけもなく信じられた。
なんの衒いも迷いもなく、その愛を受け入れられる自分がいた。
こんなに、苦しいのに。
こんなに、恥ずかしいのに。
それが保坂に応える術ならば、なんでもしてやりたいと思った。
―――身体を重ねて、初めて知った情動。
「惚れちゃった、もんだよなあ・・・」
小さく笑って、黒川はため息をついた。
「弓ちゃん?」
「は・・・んっ」
体内に納まった灼熱が、暴れたがっているのがわかる。
苦痛と快感の予感に、黒川は全身を波打たせた。
「・・・條一郎」
ゴクリと喉が鳴った。
・・・このままでは、辛すぎる。
降ってわいたような飢餓感に、黒川は胴を震わせた。
―――身体はまだ、痛みに痺れていたけれど。
「動けよ」
「え・・・?」
保坂が驚いたような声を出す。
自分を貫くかつての友人を、黒川は濡れた目で見上げた。
「動いて、いいよ。・・・気持ちよく、してくれるんだろ?」
そのまま、保坂の背中に廻した両腕に力を込めた。
「持ってけ、ドロボー・・・」
「弓ちゃん」
小さく笑いながら、保坂は頷いた。
はずみでポトリと、保坂の額から汗のしずくが垂れる。
頬に落ちたそれを舌ですくって、黒川が顔をしかめた。
「マズ・・・」
「あはは!」
身体を揺らして、保坂が笑った。
「行くよ―――」
のっそりと、上半身を起こすと。
保坂は両手を黒川の膝にかけ、腰を引いた。
「あふ・・・っ」
去っていくペニスを追いかけ、巻きつきながら、黒川の柔襞がうねる。
侵入者を押し出して、収縮した肛内。
そこを切り刻むように、保坂はぐっと一気に突き入れた。
ズシンと、衝撃が走る。
「んはあっ・・・ああぁっ・・・っ!!」
黒川が涙まじりの悲鳴をあげた。
脚がビクビクと震え、シーツを踏みしめる。
「弓ちゃん・・・っ」
抉るように深く差し込んでは引き抜き、保坂が律動を始めた。
強引に柔らかい粘膜を擦り上げ、黒川の前立腺を刺激する。
「・・・んん・・・っ・・・くっ・・・ああぁっ」
保坂にすがりつきながら、黒川は腰をずり上げて逃げを打った。
「いやぁ・・・っ」
震える腰を力任せに抱き寄せて。
「んっ・・・ゆみちゃ・・・っ」
保坂は荒い息をつきながら、黒川の中を蹂躙した。
「じょっ・・・い・・・んっ・・・ああっ」
痛みを紛らわすように、顔を左右に振りながら。
黒川は涙をこぼし、保坂の手首をぎゅっと掴んだ。
無意識のうちに爪を立て、引っ掻くような仕草をする。
まるで、自分を固定して抽挿を続ける男の手を、引き剥がそうとするように。
「弓ちゃん・・・」
保坂は苦笑して、片手をそっと緩めた。
「んあ・・・っ」
張りつめたペニスが、慣れない黒川の後孔を深々と穿った。
道筋をつけるように、何度も、何度も柔らかい内襞を切り拓く。
「ふっ・・・んんっ」
―――クチャリ、ペチャリと淫猥な音が響いた。
恥ずかしい器官を犯される音に、耐えかねたのか。
黒川がうっすらと目を開けて、保坂を見上げた。
「條一郎・・・」
潤んだまなざしの目尻が、ほんのりと薄紅色に染まっていた。
泣きはらした、腫れぼったい瞼。
それを重たそうに持ち上げて、自分を蹂躙する男を凝視する。
「なあに、弓ちゃん?」
笑いかけながら、保坂は黒川のペニスに手を伸ばした。
縮こまったそれを手のひらにくるみ、そっと扱く。
「あっ・・・んっんっ・・・」
腰の突き入れと、シンクロさせるように。
保坂は律動を繰り返しながら、黒川への愛撫を続けた。
「きっ・・・も・・・ああっ」
乾いた唇を舌で潤しながら、黒川が何か言いかけた。
「気持ち、いいの・・・っ?」
黒川の性器に手荒な愛撫を与えながら、保坂が聞いた。
「ちがっ・・・そっ・・・んんっ・・・ぅあっ」
保坂を銜え込んだ後孔が、熱をはらんで震えていた。
激しい抽挿について行けずに、黒川は喘いだ。
「はっ・・・ぁはっ・・・ぐうっ・・・!」
シーツを握りしめていた手が彷徨い、保坂の背骨にかかる。
「ゆみ・・・ちゃっ・・・痛い・・・っ?」
黒川を抱き寄せ、わななく唇にキスを繰り返しながら。
保坂は、背中に爪を立てて仰け反る恋人に問いかけた。
灼熱に翻弄され、涙をこぼしながら、黒川がうっすらと目をあける。
「じょ・・・い・・・っ」
焦点の合わないけぶるまなざし。
その頼りなげな視線に思わぬ媚を発見して、保坂は息を呑んだ。
「英弓・・・っ」
ドクリ、と跳ね上がる鼓動のままに。
保坂はいっそう深く、腰を突き入れた。
「んぐっ・・・っ」
痙攣する肛内を縦横無尽に暴れまわるペニスに、翻弄されて―――。
溺れるように、黒川は保坂の肩に縋りついた。
「あっあっ・・・ん・・・んっ」
身体を最奥まで犯される感覚。
消えてはくれない痛みと、保坂の熱に、惑乱の彼方に放り出されて。
黒川はそれでも、自分を苛む男にしがみついた。
「條一郎・・・っ」
加速する保坂の律動に、全身をゆすぶられる。
「ああぁ・・・っ」
扱かれるペニスのもたらすわずかな快感にすがりながら、黒川は悲鳴を上げた。
疼痛をやり過ごすために、何度も顔を左右に振る。
「ゆ、みちゃっ・・・い・・・くっ」
保坂のせわしない吐息が、最後が近いことを告げていた。
眉をしかめて、慌てて腰を引こうとする。
ズルリと灼熱が去っていく感覚に、黒川は四肢を強張らせた。
「ばっ・・・い・・・からっ」
―――保坂を引き止めるように。
黒川はとっさに、保坂の胴を両脚でしっかりと挟みつけていた。
「弓ちゃん・・・もうっ」
保坂の声が切迫した、次の瞬間。
うねる肛内で保坂のペニスがドクリと脈打ち、弾けた。
その衝撃に、黒川は身を捩じらせて耐えた。
「じょっ・・・ふっ・・・んんっ!」
絡みつく両手が、保坂の背中を力いっぱい引っ掻いた。
「あふ・・・っ」
一呼吸、遅れて。
甲高い悲鳴をあげて、黒川は保坂の手の中に自分を解放した。
「條一郎・・・」
激しく胸を喘がせ、全身をわななかせながら。
黒川は緩慢に腕を伸ばし、ずっしりとのしかかる保坂の熱い身体を抱きしめた。
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ましゅまろんどん
29 May 2006
2012年11月30日、サイト引越につき再掲載。・・・それにしても、自分で意識してそういうふうに書いたとはいえ、黒川さん、痛そうだなあ・・・(汗)。